ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900

2014年度初めての展覧会は「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」@三菱一号館美術館でした。

19世紀後半イングランドの美術・文芸・建築・デザインといった文化状況を「唯美主義」をキーワードに概観していくという構成です。
展示品の中心はVictria & Albert Museumから来日した作品です。六本木ヒルズで開催していたラファエル前派展と比較すると有名なモノは多くはないですが、時代の雰囲気を伝えるには十分な作品が並んでいました。特定の作家を深く掘り下げると言うよりは様々な作家を紹介していくスタイルで、唯美主義をめぐる紳士録といった様相です。

唯美主義の考え方や唯美主義者たちへ影響を与えた文化運動を明らかにするのはもちろんのこと、唯美主義という芸術運動が19世紀イングランド社会にどのような影響を与えたのかという点を丁寧に論じていたのが印象的でした。特にチェルシー地区を中心とした高級住宅建築に対する唯美主義の影響を強調し、そこからアーツ・アンド・クラフツ運動と唯美主義の関係性を明らかにしていくという流れはとても興味深く感じました。
ウィリアム・モリスというラファエル前派の一員にしてアーツ・アンド・クラフツ運動の創始者という両面の活動をうまく融合して説明してもらってとても腑に落ちた感じがしています。六本木ヒルズのラファエル前派と2013年に府中市美術館で開催されていたウィリアム・モリス展を結ぶ線が見えてきて非常に面白かったです。

また、当時の唯美主義者と社会とのかかわり合いについてパトロンとの関係や一般への受容といった好意的な関係だけでなく、唯美主義者に対する辛辣な視線がわかるような風刺画も展示してありました。コレがなかなか憎らしい出来なので一見の価値ありかと思います。

全体としては19世紀イングランドの文化状況について、今まで点と点として理解されていた部分を線にする認識を与えてくれる展覧会でした。(本当に無知識でこの展覧会を見ると物足りなさは感じそうだなという内容ではありますが。)

三菱一号館美術館で5月6日まで