あそびのつくりかた @ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

4月5日のカマタマーレ讃岐 vs 栃木SCの試合終了後、シャトルバスに乗り駅前まで戻ります。
駅前に戻る頃には試合途中から降り始めた雨が本格的なものになり、寒気が強くなっていましたが、次の目的地なら平気!


ということで丸亀にやってきたもう一つの目的「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」を訪れました。


猪熊弦一郎現代美術館は1991年開館という地方の現代美術館としては水戸芸術館などと並んで草分け的な存在。東京都現代美術館の開館が1995年ですのでそれよりも早いんですね。
丸亀市生まれの猪熊弦一郎氏の作品を並べる常設展とあわせて、意欲的な現代美術の企画展を行っていることでも知られています。
香川県にあるということで行きたいと思ってもなかなか気軽に行くことのできない美術館ですが、今回のアウェイ遠征が大チャンスということで試合の後に足を運ぶことになりました。


巨大なオブジェに出迎えられて、エントランス広場を抜けて奥の入口から中に入るとすぐにチケットカウンターです。
猪熊弦一郎氏の常設展とあわせて、今回はちょうど企画展「あそびのつくりかた」が開催されていましたので、拝見することにしました。合計950円也。


階段上がって2階が常設展。現在は『整然たる都市ーにぎやかな自然』というテーマで、1960年代後半にニューヨークで描かれた都市をテーマにした作品と、1970年代末から描かれたハワイの自然をテーマとした作品群がそれぞれ向かい合わせの展示室に並べられていました。
1960年代の都市の形象は単色をベースにした整然とした構成でどこかクールさを感じさせます。一方で1980年代を中心にハワイなどの自然を描いた作品は形が躍動しており、それぞれの図形の関係性を私たちが想像する中で物語が立ち上がってくるような能動的な作品です。この時代によって大きく変化した猪熊弦一郎の作風を二つの展示室でわかりやすく対比されていました。
2Fの遮蔽物の少ない構造のお陰で、この二つの展示室はお互いに見通せるようになっており、この変遷をじっくりと見比べることで、多彩な形のあり方を楽しむことが出来ました。


続いて3Fが企画展スペース。今回は「あそびのつくりかた」展。
子どもたちの遊びのあり方が変化してゲームやテレビなどに引き寄せられる中で、昔は遊びを通して学んでいた社会性を現代の子どもたちはうまく習得できていないのではないかという問題意識のもと、子どもたちに「遊び」の面白さを提示しようという展覧会のようです。
展示されている作家は河井美咲・梅田哲也・クワクボリョウタ小沢剛の4人。河井美咲の『毛むくじゃら』シリーズと小沢剛の『あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き』は実際に子どもたちが遊ぶことができるようになっていました。
クワクボリョウタの『10番目の鑑賞(点・線・面)』は東京ステーションギャラリーで一度拝見したことがありましたが、そこでの展示より列車のスピードが遅いように感じられました。子供向けに修正されているんでしょうかね。


個々の展示については子どもたちが作品に楽しそうに触れ合っていて、なるほどこういう光景を出現させたいのかというのがよく理解出来ました。とくに小沢剛のおふとん山では子どもたちが大盛り上がりで、ついぞ美術館では見たことがない賑やかさであり大変微笑ましく眺めることが出来ました。そういう意味では展示されている作品の有効性というのは非常によく観察することが出来ました。
これだけ子どもたちが盛り上がれるということは、この作品を複製して全国に広めていければ子どもたちが活発に動く遊び空間を増やしていけるのかななどと考えたりもしました。


一方で展覧会全体の構成としては少し物足りなさもありました。
例えば広島市現代美術館で開催中のアトリエ・ワン展も、人を集め街を盛り上げるような空間を規定するための装置を美術館で展示していましたが、そこでは人間をどのように動かそうとしているのかがある程度明確に述べられていました。
今回の「あそびのつくりかた」展は子どもたちに楽しんでもらうことを主眼においた展覧会なのだと思いますが、「どのように子どもたちを遊ばせる」というところに踏み込んでもらえると大人としてはより深い考えを得ることができたかなと思います。子どもたちはある程度自由に動いていい空間があれば自然と遊びだすと思います。そんな中でここに展示されている作品と子どもが触れ合うことでどのような化学反応が起きることを期待しているのかということがいまいち見えてこなかったです。
学校教育などでも同じですが、子供が何かをするように誘導するというのは非常に危なっかしいことであると思います。だからこそ作品を選出した意図といいますか、子供に向きあうための態度の表明みたいな物があると良かったのかなあと思います。


最後の気になった部分の記述が集めになってしまいましたが、子どもたちが楽しく遊んでいる空間を美術館の中にうまく作り上げていて、見ていて心が洗われる展覧会でした。子どもたちが居ないと少し寂しい印象になるかもしれませんが……


6月1日まで