台北国立故宮博物院展 翠玉白菜”だけ”見てきた

上野・東京国立博物館で開催されている「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」展。

目玉は6月24日から7月7日まで展示されている「翠玉白菜」。展示会場も平成館ではなくて本館特別5室という格別の扱い。
特別5室は《モナ・リザ》や《民衆を導く自由の女神》など注目度の高い作品を1点のみ展示するということがなされる部屋です。実際に開催初日から平日にもかかわらず入場制限がかかり、入場まで2時間待ちなんていう状況になっていたようです。


台北の国立故宮博物院の名品中の名品が2週間限定の公開ということで、休日は更に人がたくさん並びそうです。
最近の特別5室公開で並んだ記憶というと、「キトラ古墳壁画」の修復終了に伴う公開。この時は休日の開館すぐに到着したにもかかわらず既に50分待ちという状況でした。

ということで開催初日の平日夜という一番空いていそうな時間を狙って、見に行くことにしました。
平成館での展覧会本体を見るのはまた後日というワリキリのもと、18時半ごろに入場。
思惑通り館外の待機列は解消されていて、特別5室の中での待機列も10分程度でした。

今回のお目当ての翠玉白菜は、特別5室の中にさらに円形の部屋が作られていてその中で拝観する形。その部屋までの前フリは映像での紹介のみということで、キトラ古墳展とは少し違う感じですね。そして円形の部屋内での人のさばき方は東京国立博物館によくある「一列目は流れて見る。二列目以降でじっくり見る」という方法でした。一列目から作品までの距離も少しあるので、アートスコープがあれば、見やすいかもしれません。

翠玉白菜を一目見た印象は「思ったよりも小さい」ということでした。
白菜自体は高さ20cmくらいで、少し扁平な形。ただ、よくよく目を凝らしていくとその優美さが伝わってきます。

翡翠とは思えないほどやわらかな葉の形。細やかな葉脈の彫り。白から深い翠へのグラデーションも鮮やかです。
細部まで表現されているキリギリスと、触れば折れてしまいそうな細い足。
そして玉の肌質によって光沢を帯びる様子は、瑞々しい艶となって目に飛び込んできます。
見れば見るほど世界一級の工芸品とはこういうことかと、感慨が沸き上がってきます。

三井記念美術館の「明治工芸展」では木彫による果菜が展示されていましたが、真正性は別として美的にはそれを軽く上回っていました。材質も木よりも彫りづらいであろう翡翠ですし。
日本を代表する工芸彫刻としては、高村光雲の《老猿》が思い出されますが、それを見た時に匹敵する技への畏敬の念を覚えました。
ということで、一列目で見るための列に並ぶこと三回。二列目で眺めていた時間も含めると30分強を一つの作品を眺めて過ごしました。それだけの時間見ていても飽きず、視点を変えるごとに新しい発見をすることが出来ました。

平日夜だからこそこれだけ自由に堪能できたと考えれば、本展を捨てて見てよかったかなと思います。
きっと休日では混雑で堪能できないでしょうし、平成館と合わせてみると疲労困憊になりそうですし。

「翠玉白菜」の展示は7月7日まで。平日夜、アートスコープを持って是非見に行ってみてください。